明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

「人生どうでも飯田橋」ってありましたよね 大学が今出川にあったので「人生どうでも今出川」と改変する人が友達にいたんですけど、流石にそれは苦しいだろうと思っていました

5歳:母親が運転中に道がわからなくなって困っていたところ、建物の見える方向から「こっちじゃない?」「あっちじゃない?」と繰り返していたら見覚えのある道に出られた。当時は鼻高々だったが、今にして思えばいい大人が子供の指図で進行方向を決めるはずもなく、遊ばれていたのだと思う。人を試すような根性が気に入らないと、大人になって思われるだなんて、母親は想像もしていなかっただろうな。途中、短く急勾配な坂道が連続する谷のような道があり、地下鉄のような車体の動きとそこから見える川沿いの景色が綺麗で好きだったことを覚えている。

6歳:新しく買ってもらったベッドを見てもらいたくて、家庭訪問に来た担任の先生をベッドに誘い苦笑いされる。

7歳:祖父の入院先で同室だった手足のないおじいちゃんにじゃんけんを申し込んみ、母親に怒られる。おじいちゃんは怒らずに笑ってくれていた。

8歳:「空手(習い事)辞めたいんやったら、俺を倒せる位に強くなったってことか?」と父親に詰められて泣く。

9歳:仲良くない人達とグループで制作課題をすることになり、居心地が悪いという意味で「居場所がない」と先生に告げたら、「ほらっ、あんたらちょっとどき!さ、生活さんここに座って!」と物理的な居場所を作ってもらった。そういうことがしてほしいわけではなかった。テーマは枯山水で、学校から2キロ程離れた踏切にあるものについて、つまらない壁紙新聞を書いた。

10歳:ピアノ教室を辞める。同学年の人は発表会の時にひとりで曲を披露していたのに、いつまで経っても先生との連弾しかできなくて、自分には向きがないと知った。後で知ったことだが、教室は先生の自宅であるマンションの一室で行われていて、そういった営業行為はマンションの規約違反になっていた。

11歳:塾の担任だった先生がナガノという名前の綺麗な中年の人で、旧姓はオガワだと教えてもらった。

12歳:偶々聴いた『オリエンタルラジオのオールナイトニッポンR』で、セックスがどうだみたいな話をしていて、大人ってセックスの話とかするんだ〜と驚く。

13歳:モバゲーで知り合った職安通いのおじさんに電話で話し相手になってもらう。ガリガリくんを食べながら失禁した話を披露した後に、「大人には色々あるねん」と言っていた。

14歳:色白で痩せこけたフランス人みたいな男の子と友達になる。父親も母親も黄色人種だった。

15歳:ポケモン金銀のリメイクで友達と対戦したら、エイパムが進化したやつのニックネームが"キャンタマ"で、二又に分かれた尻尾が睾丸っぽいのかな?と思いつつも尋ねることができなかった。

16歳:夜中にTSUTAYAに行った帰りに、道路にしばらく車が通らなさそうだったので、数十秒の間大の字になって寝転び夜空を見上げた。夏の始まりの、僅かに汗ばむ夜で、綺麗な星があった。

17歳:初めてバレンタインのチョコレートを手作りする。チョコレートと生クリームを溶かして混ぜただけのゴミのようなものだったが、自分で作ったものを人に食べてもらう体験を経たことが誇らしかった。

18歳:デートでマルチの野菜押し売り事務所に押しかけるも、奥にいた大人が怖そうだったので即退散する。

19歳:毛先を青く染めるも、色が抜けて緑色っぽくなる。当時は髪を外ハネっぽくしていたので"孔雀"とあだ名され、即座に切り落とす。

20歳:新入生の帰国子女と友達になり、週に一回昼食を奢る代わりに英語の宿題を代行してもらい、どうにか単位を取得する。

21歳:先輩にノリでフェラチオしたら大フェラチオ大会になったものの、後になってしゃぶれと言いだした別の先輩に「お前がしゃぶり始めたせいでこっちまでしゃぶらなあかんようになったやんけ」と怒られる。

22歳:卒論の実験後、北山から歩いて出町柳へ。鴨川デルタで放心していたら夜になっていた。そんな感じでB4が終わっていった。

23歳:「ママだよ〜♡」と甘やかしてくれる友達にいいこいいこしてもらう等して無職1年目をやり過ごす。好きだった大学近くのラーメン屋が潰れてしまった。

24歳:全然付き合ってない人とマクドで食事をしていたら、隣の席のちびっ子に「2人は付き合ってるの〜?」と尋ねられ、「2人は付き合ってないんだよ〜」と返事をした後、しばらくの間俯きながらポテトを少しずつ食べた。

25歳:「君の人生はそれでいいのか?もっと熱心になれないのか?見ててちょっと腹立つわ」と怒られる。

26歳:東京の電車は2,3分で次のものが来る。そのスピード感に圧倒され、少なくとも終の住処ではないなと改めて思う。

27歳:初めて自分でカニを買って食べる。スーパーで1000円のそれは、身はたっぷりなものの、思っていたよりもミソが少なく、カニを満喫する為には1000円では足りないと知る。

f:id:Halprogram:20221016204422j:image2020年3月 人生どうでも今出川

おわり