明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

BLEACH BERRY BEST[THE DEATH AND THE STRAWBERRY]

漫画『BLEACH』における好きな描写のごく私的な覚え書き 死神代行篇

f:id:Halprogram:20230316130217j:image久保帯人BLEACH』 1巻82項 2.Starter

死神としての覚悟を問うルキアに対する一護の応答。過激な要求に対する保守的なカウンターではあるが、やれることに対して全力を尽くすという態度は、一護の基本的な姿勢としてあるように思う。第2話にしてこれが描かれているのか、という驚きがある。

f:id:Halprogram:20230316161241j:imagef:id:Halprogram:20230316161244j:image久保帯人BLEACH』 1巻110,111項 4.WHY DO YOU EAT IT ?

千鶴や圭吾のセクシャルな言動を諫める描写の多いたつきだが、自身もまた織姫に対して過激な提言を行なっている。これは描写の揺らぎというよりは、織姫とたつきの特別な親しさの表れとして見るべきだろう。

f:id:Halprogram:20230316154850j:image久保帯人BLEACH』 1巻145項 5.Binda・blinda

アシッドワイヤーと化し織姫を襲う彼女の兄、昊に対して啖呵を切る一護。自身もまた妹達を護る兄であることから、発言に属人性による重みが生じていることに加えて、"死んでも"がものの例えではなく、死して虚と化した事実にかかっている点が秀逸。

f:id:Halprogram:20230316163628j:image久保帯人BLEACH』 2巻98,99項 12.The Gate of The End

この時点では明らかにされていないが、自身の過失によって母親である真咲が命を落としたことを「おふくろを殺したのは… …俺なんだ……!!!」と表現するような自責の念が一護の根底にはある。その彼が、母親殺しの犯人が地獄に堕ちる様子を見て何を思ったのか。推し量るに余りある。尤も、真咲は戦闘中に聖別さえ起こらなければグランドフィッシャーに敗れる筈のない実力の持ち主であり、実際には一護の過失とは言い難い面も多分にあるのだが。

f:id:Halprogram:20230316170015j:image久保帯人BLEACH』 2巻150項 15.Jumpin' Jack' Jolted

端的に顔立ちが好みな上に長身痩躯でファッショナブルかつ文武両道と、全てを持っている登場人物であるところの国枝鈴。彼女の描写は作中においてごく僅かであり、これはその貴重なもののひとつだ。『ステイトメント・オブ・ジ・アート』は日本語でいえば『芸術声明』となるのだろうか。文武に留まらず芸術方面の才覚もあるのだろうか。WJ掲載時のサブタイトルは『Jumpin' Jack, Joy'n' Jolt』であった。

f:id:Halprogram:20230316183239j:image久保帯人BLEACH』 2巻153項 15.Jumpin' Jack' Jolted

同じく『15. Jumpin' Jack' Jolted』から。端的に面白い。

f:id:Halprogram:20230316183543j:imagef:id:Halprogram:20230316183546j:image久保帯人BLEACH』 2巻157,158項 15.Jumpin' Jack' Jolted

似たもの兄弟という言葉は主に血縁者に対して用いられるものだが、白哉の義妹にあたるルキアの場合はどうか。尸魂界の掟に従いルキアの処刑を止めることをしなかった程の強い規範意識を持つ白哉、朽木家当主たる彼の態度を内在化させることはルキアの養子としての立場を踏まえればごく自然なことだろう。自然でありながら後の展開の布石となる面白い描写だ。

f:id:Halprogram:20230316190822j:image久保帯人BLEACH』 3巻49項 19.6/17 op.3“memories in the rain”

尸魂界篇では、恋次ルキアを救出すべく奔走する過程で彼の思いの丈が垣間見える一方で、ルキアから恋次への思いに関しては一護、白哉海燕ら程には描かれていないように見受けられる。しかしながら、ルキア恋次に対して抱いていた思いは断片的ではあるものの、確かに描かれていた。『52.Needless Emotions』での同級生達を羨む描写は、ルキア捕縛で現世に訪れた恋次に対する前振りとしての色があまりにも強いが、この時点で友人関係における問題が示唆されていることで自然な描写として捉えることができる。

f:id:Halprogram:20230316225238j:image久保帯人BLEACH』 3巻82項 20.6/17 op.4“face again”

縦の決め絵にシネマスコープ的な黒帯(シネマスコープは21:9のアスペクト比を指すもので、黒帯は16:9の画面の中でそれを擬似的に再現する為の術でしかないのだが)に効果音を重ねる演出が初めて用いられる。単に白いコマ枠で表現するのではなく黒帯とすることで視覚的な没入を生んでいることが面白い。この手の演出は比較的初期に多かった印象。

f:id:Halprogram:20230316230334j:image久保帯人BLEACH』 3巻110項 22.6/17 op.6“BATTLE ON GRAVEYARD”

おもろいやろ。千年血戦篇に先駆けてコンのマッスルモード(?)が描かれている。

f:id:Halprogram:20230316231226j:image久保帯人BLEACH』 3巻167項 24.6/17 op.8“All One Way Sympathies”

グランドフィッシャーとの戦いに引き分けた一護、一護の誇りを守るための戦いに手出しをしなかったルキア。かつて海燕の誇りを守るための戦いに手出しをしなかったことを端とした自責の念に駆られていたルキアは、一護が死なずに戦いを終えたことに心から安堵したのだろう。それでも、ルキアと一護の絶望の雨は止まない。

f:id:Halprogram:20230316232122j:image久保帯人BLEACH』 4巻18項 26.Paradise Is Nowhere

全698話の中で最も異質とも言えるコンの主役回、の中で国枝鈴がコンを踏みつけるのだが、このスタイルの良さよ。ほんでお洒落やねえ。この直後に逃げるコンを追う国枝曰く、100m走のタイムが12秒フラットとのこと。破面篇序盤の一護の虚化保持時間より1秒長い。

f:id:Halprogram:20230316232734j:image久保帯人BLEACH』 4巻41項 27.Spirits Ain’t Always WITH US

オレンジ髪でユウレイが見えて果てには死神代行にまでなって、初期の一護はとにかく特別であるという描写が多かった中で、一護に「ふつうだね…」と言える織姫はそれこそ特別な存在として描かれていた。

f:id:Halprogram:20230316234800j:imagef:id:Halprogram:20230316234803j:image久保帯人BLEACH』 4巻48,66項 28.Symptom of Synesthesia

端的に不同意性交を示唆していて水色のバックグラウンドに察するべきものがある。連載当時の性交同意年齢は13歳だったか、めちゃくちゃやな。話が逸れてしまった。

f:id:Halprogram:20230317003401j:imagef:id:Halprogram:20230317003358j:image久保帯人BLEACH』 4巻115,116項 31.HEROES CAN SAVE YOU

一護がそれを自認していない、あるいは否認することと別で、観音寺が語るヒーロー像は作中における一護の行動とピッタリ符合する。全698話の内の10話前後しか登場していないドン・観音寺が、作品の重大なテーマである勇気のディテールを示唆していることは非常に興味深い。

f:id:Halprogram:20230317005422j:image久保帯人BLEACH』 4巻167項 33.ROCKIN’ FUTURE 7

同じ霊能系少年漫画である『幽☆遊☆白書』が霊界探偵編から暗黒武術会編へ移行するに際して、エブリデイマジック的作風から趣を大きく変えたのに比して、『BLEACH』ではそれをあまり強く感じなかったのは、作品の重きが登場人物間の関係性に当初からあった為だと思わされた1コマ。

f:id:Halprogram:20230317010237j:image久保帯人BLEACH』 4巻173項 34.Quincy Archer Hates You

単純に後に背中合わせで虚と戦うことの暗喩とも読めるが、千年血戦篇で明らかになった滅却師が影の力を有している設定を踏まえて扉絵を見ると、一護の影のように描かれる雨竜が滅却師の影の力を示唆しているようにも読み取れる。また、斬魄刀の本体はユングが言うところの影(shadow)に近い概念だが、一護のそれである斬月は根底に滅却師の力を有していることから、その点も意識されているか。あるいは、真咲を巡る一心と竜弦の関係からは、雨竜自身が一護の影であるとすることも無理筋ではないようにも思われる。初期から終盤への構想が練られていたことが読み取れる一枚。

f:id:Halprogram:20230317012100j:imagef:id:Halprogram:20230317012057j:image久保帯人BLEACH』 4巻178,179項 34.Quincy Archer Hates You

アホが前面に出がちな圭吾だが、こういう面があると一護や水色は理解しているからこそ友達なのだろうと思わされる描写。

f:id:Halprogram:20230317012923j:image久保帯人BLEACH』 5巻53項 37.Crossing The Rubicon

空座町の住民を危険に晒してまで自身の実力を顕示しようとする雨竜が背水の陣を敷いているのは明らかだが、"ルビコン川を渡る"という表現をわざわざ用いていることから、メタ的な意味として雨竜をカエサルになぞらえていることが読み取れる。だから見えざる帝国の後継者に選ばれるわけだな。散々言われ尽くされていることではあるが。

f:id:Halprogram:20230317013802j:image久保帯人BLEACH』 5巻99項 39.Rightarm of The Giant

チャドを美しいと表現するアブウェロが印象的。原画展の作者コメントにもその点に関する言及があった。「美しいでは読者がピンとこないと編集に言われたが押し切った」みたいな内容だったと記憶している。

f:id:Halprogram:20230317014404j:image久保帯人BLEACH』 5巻120,121項 40.Grow?

うまく言えないが、一連の流れに美しいものを感じたので印象に残っている。

f:id:Halprogram:20230317015720j:imagef:id:Halprogram:20230317015723j:imagef:id:Halprogram:20230317015717j:image久保帯人BLEACH』6巻121-123項 49.Unchained

大虚の虚閃に共鳴して一護から放たれる霊圧が増大するというのは、彼の力の根底に虚のそれがあることを示唆している。当たり前のように描かれているので見逃してしまいそうになるが、死神が虚の霊圧に共鳴するというのはおかしなことなので。似たような描写として『260.RIGHTARM OF THE GIANT2』のチャド、あるいは、『677.HORN OF SALVATION』の一護が挙げられる。

f:id:Halprogram:20230317020250j:image久保帯人BLEACH』6巻145項 50.Quincy Archer Hates You Part 2[Blind But Bleed Mix]

憑き物が落ちたかのような雨竜の表情が印象的。尤も、滅却師の誇りと柵の間で揺れる彼には更なる苦難が後に待ち構えているのだが。見えざる帝国から雨竜を連れ戻そうとする際の「石田を殴る」という旨の一護の照れ隠しは、2人の出会いのリフレインでもある。

f:id:Halprogram:20230317021309j:image久保帯人BLEACH』6巻162,163項 51.DEATH 3

水色は人を見る目に優れているが、そうして感じたことを直接本人に伝える描写は見られない。対する圭吾もまた見る目がある一方で、所謂お調子者のようなキャラクターから、彼の気遣いが真っ直ぐに受け取られることは少ない。水色は一護と雨竜を指して似たもの同士としているが、水色自身もまた圭吾と似たもの同士であるように思われる。

f:id:Halprogram:20230317022808j:imagef:id:Halprogram:20230317022805j:image久保帯人BLEACH』7巻41,42項 54.名も訊けぬ子供

恋次の言う「二千年早ぇェよ!!!」とは瀞霊廷の歴史が二千年であることを踏まえてのものであり、2001年に『BLEACH』が連載開始された経緯からは、紀元前/後のキリスト誕生による神の統治と重ねた上での設定であるものと思われる。サブタイトルの『名も訊けぬ子供』は、斬魄刀もさることながら、名乗りすらされずに白哉に倒されることにも掛かっているのだろう。

f:id:Halprogram:20230317023524j:image久保帯人BLEACH』7巻68項 56.broken coda

目で追うことも叶わなかった白哉の速度に勝ちたいという思いが一護の影となり、卍解が超速戦闘の力を齎す形となったのだろう。それを強く感じさせられる描写。因みにこの前のページが原画展で飾られていた。「前に倒れる人間はどこに視線をやるのか」みたいなコメントが添えられていた。この後、再び絶望の雨が降る。

f:id:Halprogram:20230317024552j:image久保帯人BLEACH』8巻32項 63.Lesson2-3:Innercircle Breakdown

虚の孔から聞こえてくる斬月の声は、一護の死神の力が虚に起因したものであることを示唆している。それはそうと、一護の虚化を経由した死神化が成功したのは、後に明らかにされた虚化に伴う魂魄自殺の設定を踏まえると、彼が死神の力と虚の力と滅却師の力を有した人間だからであって、通常ではあり得ないプロセスである。

f:id:Halprogram:20230317025524j:image久保帯人BLEACH』8巻84項 65.Collisions

表面的な気さくさで他隊隊長と世間話を交わす市丸と、その市丸に謎の布で包まれる更木。後々の展開を踏まえると妙なおかしさがある。

f:id:Halprogram:20230317025828j:image久保帯人BLEACH』8巻105項 65.Collisions

かの有名な「退けば老いるぞ 臆せば死ぬぞ!」に至る直前の描写。一護のモノローグからフォント変更と共に斬月の発言へと切り替わるが、斬月もまた一護自身である為にモノローグ然とした影のような黒背景の上にセリフが描かれている。

f:id:Halprogram:20230317031248j:image久保帯人BLEACH』8巻143項 68.最後の夏休み

織姫の兄との思い出のエピソード自体の美しさもさることながら、幼き日に魔法のように感じた秋茜を指にとまらせる力と、今まさに欲している護る力がパラレルの関係となって語られている。尸魂界での戦いに身を投じる織姫の決意の強さが読み取れる。

おわり