明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

BLEACH BERRY BEST [FOURTEEN DAYS FOR CONSPIRACY]

漫画『BLEACH』における好きな描写のごく私的な覚え書き 尸魂界篇

f:id:Halprogram:20230321204055j:imagef:id:Halprogram:20230321204051j:image久保帯人 『BLEACH』 10巻39,40頁 81.Twelve Tone Rendezvous

霊珠核に霊力を込めるコツとして岩鷲が述べた"心の中に黒い円を描きその中心をめがけて飛び込む自身をイメージする"というものは、真咲の魂魄自殺を防ぐ為の術式で一心が彼女の内面世界に飛び込んだ際の描写と重なる。また、この直前に一護が語ったルキアを助ける理由も、一心が真咲を助ける理由として語ったそれにピッタリと符合する。一連の描写に志波家の血筋を感じるのだ。

f:id:Halprogram:20230321211501j:image久保帯人 『BLEACH』 10巻78頁 83.COME WITH ME

瀞霊廷への侵入へ帯同せんとする岩鷲の軽口が『BLEACH』におけるヒーロー像の一端を語っているとこの時点では誰も思うまいよ。作中におけるヒーローとは言うまでもなく一護であり、各章で敗戦の後に潜伏と修行を経て最終決戦に馳せ参じる姿と重なる。『555.THE HERO』と『581.THE HERO 2』で描かれる霊王宮から瀞霊廷へ駆けつける一護が特にわかりやすい例として挙げられる。

f:id:Halprogram:20230322094817j:image久保帯人 『BLEACH』 10巻190頁 88.SO UNLUCKY WE ARE

一矢報いんとする一角の反撃を戦いの刹那の中で浦原のそれと比較する一護。ノンバーバルな視覚に訴えかける演出に『BLEACH』らしさとでも言うべきスタイリッシュを感じる。

f:id:Halprogram:20230324210529j:image久保帯人 『BLEACH』 11巻16頁 89.Masterly! And Farewell!

久保帯人作品にはタランティーノ映画ような洒脱な味わいが漂う瞬間があり、その好例のように思っているのがこのやり取り。余談になるが、『182.GET BACK FROM THE STORM[TRIGGER FOR A NEW CONCERTO]』の見開き扉絵は『Reservoir Dogs』のジャケットから着想を得たものだろうと睨んでいる。

f:id:Halprogram:20230325184034j:image久保帯人 『BLEACH』 11巻37頁 90.See You Under a Firework

自身のルッキズムとは相容れない岩鷲を最大限に賞賛する弓親、その潔さと同居する凄惨な殺意に満ちた表情に堪らなく惹かれる。『KILL BILL Vol.1』でブライトに一太刀入れられたオーレン・イシイが「見縊っていたよ」と漏らすシーンがあるが、あれと少し似ている。

f:id:Halprogram:20230325185333j:image久保帯人 『BLEACH』 11巻53頁 90.KING OF FREISCHüTZ

サブタイトルは慈楼坊と雨竜が争うこととなった称号である『最強の飛び道具使い』をドイツ語混じりに英語表記したもので、これによって滅却師がドイツをモチーフとした種族であることが作中で初めて示唆される。扉絵を引いたのは単にサブタイトルが印象的であったからというだけの理由なのだが、Tight Rock Eleganceとでも言うべき雨竜のファッションは非常に00年代前半的でわたし好みだ。

f:id:Halprogram:20230325203509j:image久保帯人 『BLEACH』 11巻81頁 92.Masterly! And Farewell![Reprise]

散霊手套(苦難の手袋)の実際は織姫の見立てと異なり、霊子を高レベルで拡散させる機能を有しており、そのような過酷な環境下において霊弓を維持させることによって雨竜は滅却師の基本能力である霊子の収束能力を向上させた。シャウロン・クーファンが大紅蓮氷輪丸の花弁を卍解解除のタイムリミットを示しているのだろうと推測していたものの、実際には卍解完成までのタイムリミットであったように、地の文で書かれていない登場人物の発言が必ずしも正しいわけではなく、ともするとミスリードである可能性すらあるという描写がかなり早い段階から行われている。これは『BLEACH』を読む上で重要な点だ。

f:id:Halprogram:20230328133515j:imagef:id:Halprogram:20230328133512j:image久保帯人 『BLEACH』 12巻114,115頁 104.The Undead

作中で度々指摘される一護の甘さは弱者相手に留まらず、更木のような(少なくともこの時点では敵いもしない)強者へも向けられる。対象不問で一貫する一護の態度が見て取れる、好きな描写。

f:id:Halprogram:20230328135029j:image久保帯人『BLEACH』12巻142頁 106.Cause For Confront

京楽って英語苦手なんかな

f:id:Halprogram:20230401142507j:image久保帯人『BLEACH』12巻165頁 107.Heat In Trust

メキシコはスペイン(虚・破面)から侵略された歴史を持つ地で、沖縄もまたアメリカ(完現術師の国であるイギリスの支配下にあった国)の支配下にあった地である。完現術の能力が原則英語で命名される中で、彼のそれが虚の言語であるスペイン語で命名されているのは、そういった支配の歴史に裏打ちされたものであるからだろう。しかし、浅黒い肌の魂を使役した彼の完現術の名称が、白い虚や破面の言語であるスペイン語で命名されているというのは、彼もまた白と黒が入り混じった存在で、BLEACHそのものであるように思われる。

f:id:Halprogram:20230401144254j:imagef:id:Halprogram:20230401144236j:imagef:id:Halprogram:20230401144240j:imagef:id:Halprogram:20230401144301j:image久保帯人『BLEACH』12巻173-176頁 107.Heat In Trust

『GTO』や『ごくせん(TVドラマ版)』の流れを汲むような、00年代ヤンキー的絆にどうしようもなく胸を打たれる。救急車を呼ぶ件も非常にスタイリッシュなのだが、直前に殴られて気を失った横ちん(敵集団の親玉)が勘定に入っていないところが妙な笑いを誘う。

f:id:Halprogram:20230401154208j:image久保帯人『BLEACH』12巻194頁 0.8.a wonderful error

この水色のモノローグに心を強く重ねていた時期があった。

f:id:Halprogram:20230401155920j:imagef:id:Halprogram:20230401155926j:imagef:id:Halprogram:20230401155915j:image久保帯人『BLEACH』13巻89-91頁 112.The Undead 2 [Rise & Craze]

一護=自我、ホワイト=イド、斬月=超自我の構造がホワイト初登場の時点で示唆されているのもさることながら、斬月の雨と絶望をパラレルにしたモノローグも味わい深い。THE BLADE IS MEなのである。

f:id:Halprogram:20230401193157j:image久保帯人『BLEACH』13巻138頁 114.崩れゆく世界のすべてについて

斬魄刀に名を尋ねるも、応じてもらえない更木。彼に声をかけるやちるに対して「黙ってろ」と吐き捨てる姿を見ると、そりゃあ野晒は名前を教えないよなあ。その後のやちるのモノローグは思慕の情のようで、自身を労る母なる存在のようだ。これは更木が少年時代に出会った卯ノ花烈によって彼の影が形取られているからに他ならないと読んでいる。

f:id:Halprogram:20230401194350j:image久保帯人『BLEACH』13巻152頁 115.Remnant

作中で狛村以外が貴公という二人称を用いている唯一の描写(のはず)、彼らは八番隊所属だろうか。

f:id:Halprogram:20230401194702j:imagef:id:Halprogram:20230401220004j:image久保帯人『BLEACH』13巻158頁 115.Remnant,16巻84頁 134.memories in the rain2 op.2“Longing For Sanctuary”

岩鷲と海燕の表情に血筋を感じずにいられない。

f:id:Halprogram:20230401195222j:image久保帯人『BLEACH』14巻23頁 116.White Tower Rocks

『657.GOD OF THUNDER 2』等でも明らかなように、夜一はチャドを基本的に茶渡と呼ぶのだが、ここではチャドと呼んでいる。この時点では本名を知らなかったのだろうか。

f:id:Halprogram:20230401195900j:image久保帯人『BLEACH』14巻50,51頁 116.White Tower Rocks

管見の限りでは『BLEACH』の決め絵で白背景が用いられた初めての例と記憶している。手抜きと揶揄する向きもあるのだろうが、実写でいえば浅い被写界深度で背景をぼかして被写体を際立てるような効果を持っているように思う。実写では焦点距離や撮影距離の問題からこのように見せることは不可能だろう。漫画らしい描写であることもさることながら、白が大きな意味を持つ『BLEACH』でこのような手法が多用されることにちょっとした面白味を覚える。しかし、絵に力があるな。

f:id:Halprogram:20230401200940j:image久保帯人『BLEACH』14巻62頁 117.Remnant 2 [Deny the Shadow]

邦題は『面影2 [否定された影]』、周囲の人物が皆一護を海燕と重ねる中で、それを明確に否定する白哉。父に志波一心を持つ一護に彼らが重ねた影は誤りではなかったが、辿った命運は大きく異なるものであった。そういった意味では、否定された影というのは今後の展開を示唆する味わい深いサブタイトルであるように思う。ルキアの痛切な表情にいたたまれなくなる。

f:id:Halprogram:20230401202913j:imagef:id:Halprogram:20230401202848j:imagef:id:Halprogram:20230401202902j:imagef:id:Halprogram:20230401202855j:imagef:id:Halprogram:20230401202908j:image久保帯人『BLEACH』14巻69-73頁 117.Remnant 2 [Deny the Shadow]

一護の卍解である天鎖斬月が速度に特化したものであることからも明らかなように、一護が求めたものは速度で、それは何が起きたかも分からぬままに白哉に斬り伏せられた体験に起因するものと思われる。一護が確かに強くなったのだと感じさせられる描写。

f:id:Halprogram:20230401204811j:imagef:id:Halprogram:20230401204805j:imagef:id:Halprogram:20230401204759j:image久保帯人『BLEACH』14巻149-151頁 121.In Sane We Trust

織姫の厚いチョコラテ描写

f:id:Halprogram:20230401211439j:imagef:id:Halprogram:20230401211434j:imagef:id:Halprogram:20230401211428j:image久保帯人『BLEACH』15巻17-19頁 124.Crying Little People

背景にマユリが描かれているからミスリードされそうになるが、この時点で雨竜は竜弦の気持ちも知らなければ自分が本当に守りたいものも見つけられていなくて、宗弦は見えざる帝国との避けられぬ戦いを想定していたのだろう。

f:id:Halprogram:20230401212115j:imagef:id:Halprogram:20230401212120j:image久保帯人『BLEACH』15巻56.57頁 126.The Last of a Void War

雨竜とネムが抱える父親との確執がパラレルに描かれている。わからないとしつつもマユリへの愛を確かに感じているネムの言葉を、竜弦の愛を知らない雨竜は空を眺めながら耳に入れる。其々の愛憎の在り方を感じるのだ。

f:id:Halprogram:20230401214853j:imagef:id:Halprogram:20230401214858j:imagef:id:Halprogram:20230401215003j:imagef:id:Halprogram:20230401214904j:imagef:id:Halprogram:20230401214949j:image久保帯人『BLEACH』16巻20-24頁 131.The True Will

果たして、雛森に血を流させたのは市丸だけだろうか。日番谷の愛のままならなさが苦しい。

f:id:Halprogram:20230401221022j:imagef:id:Halprogram:20230401221229j:image久保帯人『BLEACH』16巻122,123頁 136.memories in the rain2 op.4“night of wijnruit”

生き死には違えど、ルキアの優しい刃は海燕も一護も救う結果を齎した。かつて海燕の胸を貫いた刃が一護に力を齎したことで、ルキアは身も心も救われることとなる。このパラレルの構造、よくできているよなあ。

f:id:Halprogram:20230401225223j:image久保帯人『BLEACH』16巻174頁 139.Drowsy,Bloody,Crazy

虚化制御の内在闘争に際して一護はその内面世界で力の象徴としての更木に出会う。一護の虚の力がイドのそれだとするならば、このような発言を行う更木がその制御の場面で登場するのも道理だ。しかし、この絵には迫力あるな。

f:id:Halprogram:20230401225952j:imagef:id:Halprogram:20230401230005j:imagef:id:Halprogram:20230401225958j:image久保帯人『BLEACH』17巻14-16頁 140.Bite at the Moon

一連のコマ割りが映像的で印象深い

f:id:Halprogram:20230401233937j:image久保帯人『BLEACH』17巻177頁 148.Countdown to The End:2 [Lady Lennon~Frankenstein]

インターネットの人とのコミュニケーションでこの東仙に近いことを感じる。盲人である彼と全く同じではなくとも、制限された形態のコミュニケーションの中で、相手を美しく思ったり、言いたいことを言えなかったりする。そして、雲が好きな東仙が"世界の邪悪を雲のごとくに消し去ろう"と誓う姿に胸を打たれる。『BLEACH』の登場人物の中でも特に純粋で美しい心の持ち主ではないだろうか。

f:id:Halprogram:20230401234840j:image久保帯人『BLEACH』17巻206頁 149.Countdown to The End:1 [Only Mercifully]

恋次が初めて一護を"一護"と呼ぶ回 本人に直接じゃないんだね

f:id:Halprogram:20230402000555j:image久保帯人『BLEACH』67頁 152.The Speed Phantom

尸魂界篇における一護の仕事はルキアと仲間を救うことであって、ルキアを護るのは恋次の仕事なのである。一護とルキアのカップリングを夢想したファンはこのあたりの描写を読み飛ばしていたのだろう。

f:id:Halprogram:20230402001423j:imagef:id:Halprogram:20230402001418j:image久保帯人『BLEACH』187,188頁 158.Sky Leopardess

二撃決殺の一撃目を鳩尾に決めておきながら夜一の背後を取る砕蜂、当初より無意識に殺すこと自体ではなく自身の実力を夜一に認めさせることに重きがあったのだろう。

f:id:Halprogram:20230402003222j:imagef:id:Halprogram:20230402004124j:imagef:id:Halprogram:20230402004127j:image久保帯人『BLEACH』19巻52-54頁 161.Scratch the Sky

一連のやり取りに心理臨床のSVに近いものを感じる。浦原がバイザーで一護がバイジー、白哉がクライエントだ。心理臨床に重ねずとも、自身について他者にあれこれ言われたとしても、自身の内側からの声に耳を傾け腑に落ちるプロセスを経ないことには自己理解に至らないといえば、日々の実感に重なる部分があるだろう。そして、名を知ることで力を得るという件はヨハネによる福音書1章12節の"しかし、彼を受け入れたもの、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。"という部分と重なる。後に登場する兵主部一兵衛は、名が力を持ち、それを知ることが自己理解であるとする世界観をより強固なものとする存在だ。死神の長がそのような態度なのだから、『BLEACH』において名が重要な意味を持つことに疑いの余地はない。

f:id:Halprogram:20230402005226j:imagef:id:Halprogram:20230402005229j:image久保帯人『BLEACH』19巻100,101頁 163.THE Speed Phantom2[Denial by Pride, Contradiction by Power]

遂に一護が速力で白哉を超越する。千本桜厳景の刃の全てを叩き落とした一護に視線を奪われる白哉があまりにも印象的。

f:id:Halprogram:20230402005911j:imagef:id:Halprogram:20230402005907j:imagef:id:Halprogram:20230402005915j:image久保帯人『BLEACH』19巻110-112頁 164.That Who Change the World

雨竜の発言を遮る織姫からは、ルキアへの嫉妬の影と、久保先生の"ジャンプ的なノリに単純には屈さないぞ"というような態度が見て取れる。

f:id:Halprogram:20230402010340j:image久保帯人『BLEACH』19巻145頁 165.Dark Side of Universe2

名も無き者が強大な力を有しているというのは、先の月牙天衝の件と一見矛盾するようにも見える。しかし、この虚の力は一護本来の力でありながらこの時点では御しきれなかったものであり、いわば更木が無意識に垂れ流した霊圧の方が一護が研ぎ澄ましたそれよりも強かったという描写に通ずるものがある。しかし、一護の虚化はかっこええな。

f:id:Halprogram:20230402011154j:image久保帯人『BLEACH』19巻161頁 166.Black & White2

これまで小僧や貴様呼ばわりしていた白哉が初めて一護を兄と呼ぶ、その表情の穏やかなこと。

f:id:Halprogram:20230402011808j:imagef:id:Halprogram:20230402011815j:imagef:id:Halprogram:20230402011812j:image久保帯人『BLEACH』20巻131-133頁 174.end of hypnosis6 [The United Front]

藍染が一護の剣を素手で止める、あるいはその逆という描写は作中に3回あるが、その始まりがこれである。以降の描写のリフレインは一護の力の上昇を端的に示す味わい深いものとなっている。最初は指一本だったのだ。

f:id:Halprogram:20230402012426j:image久保帯人『BLEACH』21巻48頁 180.Something in the Aftermath

本当に何気ない描写なのだが、隊舎に斬月を置き去りにしてしまうあたりからも、この時点での一護はTHE BLADE IS MEではなくTHE BLADE AND MEなのだと思わされる。

f:id:Halprogram:20230402020808j:image久保帯人『BLEACH』21巻56頁 181.AND THE RAIN LEFT OFF

『NO BREATHES FROM HELL』で一護が乱菊や恋次と一緒に酒を飲もうとしていたことで途端に味わい深い描写になったんだよな。

f:id:Halprogram:20230402022254j:image久保帯人『BLEACH』21巻69頁 181.AND THE RAIN LEFT OFF

6/17に降り始めた、更に言えば一護が真咲を失いルキアが海燕を失った日から降り始めた雨が、止んだ。

f:id:Halprogram:20230402023313j:imagef:id:Halprogram:20230402023306j:imagef:id:Halprogram:20230402023310j:image久保帯人『BLEACH』21巻79-81頁 182.GET BACK FROM THE STORM[TRIGGER FOR A NEW CONCERTO]

全ての元凶と言っても過言ではない浦原からの謝罪に思わず視線を逸らす一護、そんな仕草に数々の死線を潜り抜けても彼は15歳の少年なのだと思わされる。

f:id:Halprogram:20230402023757j:image久保帯人『BLEACH』21巻86頁 182.GET BACK FROM THE STORM[TRIGGER FOR A NEW CONCERTO]

織姫とチャド、マジで人間できてんなァ…

f:id:Halprogram:20230402023942j:image久保帯人『BLEACH』21巻91頁 182.GET BACK FROM THE STORM[TRIGGER FOR A NEW CONCERTO]

コンの義霊丸が入った状態の一護を"一護"と呼んだことがないと一心は後に語るが、道行く人の反応がその証左であるように思われる。

おわり