明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

220329

バイトの帰り道、突如として限界が訪れて地べたにへたり込んでしまった。誰もいない車両だったせいだろうか、とにかく誰にも見られなくて良かった。JRで帰る予定をしていたが、途中の駅で降り、京阪でのルートに切り替えた。JRよりも、京阪の方が駅から家まで歩く距離が短くて済む。帰路の途中で立ち寄った寺社は春の祭典を催していて、白檀の香りが漂っていた。

写真撮影が好きだ。巧拙と別で、撮影する行為が好きだ。母方の祖父がよくある小さなデジカメで、晩年まで写真撮影を趣味にしていた。祖父が亡くなってから、自分も写真を撮ろうと思うようになった。

大学では映画サークルに所属していたが、当時はカメラには関心が持てなかった。映画に明るくなかったので、自分よりも上手い人がカメラを回せばいい、と考えていた。大学を出て、自分の目で見て切り取った光景が形に残っていることの愛おしさに気づかされた。

f:id:Halprogram:20220329193821j:image2015年7月20日 今は亡き同志社前の天下一品と丼 iPhone6

カメラを何台か所持している。現在使っているのはLEICA Q2とOLYMPUS TG-6の2台が中心だ。写真は一向に上手くならない。上手くならないのを、被写体の魅力や機材の力を借りて、それらしく見せたり、失敗したりしている。構図や光と影との遊び方が未だにピンときていない。構図の本を齧ったりもするが、読んだその時は理解できても自身の血肉や引き出しになったような感覚にまで至らない。

f:id:Halprogram:20220329194313j:image2019年10月25日 潰れた煙草屋とポスト LEICA D-LUX Typ109f:id:Halprogram:20220329194840j:image2020年4月7日 バイト先 Lomography Simple Use Film Camera,Color Negative ISO400f:id:Halprogram:20220329195329j:image2020年11月9日 西新宿のマスターが気持ち悪い喫茶店の猫 LEICA Q2

ポートレートが好きだ。巧拙よりも、わたしと被写体の関係性が写真の味になるような気がするからだ。作品撮りは何度か取り組んだことがあるが、あまり上手くいかなかった。お気楽なスナップポートレートノリの中で、気取らない美しさのようなものを見出したい、というような思いがある。これは半分で、大きく振りかぶってテーマに沿うというようなことから逃げているとも言える。

f:id:Halprogram:20220329200025j:image2019年4月12日 出町柳 NIKON COOLPIX S6500f:id:Halprogram:20220329200028j:image2019年5月18日 バイト iPhone8f:id:Halprogram:20220329200031j:image2015年11月19日 撮影 CANON EOS Kiss X7i,CANON EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM

ポートレートのポスプロが難しい。被写体の肌荒れ、シミ、にきび、ほうれい線等に修正を加える気になれない。これらは一般に修正することが好ましいとされているが、中々気乗りしない。これには2つの理由がある。

ひとつは、わたしの中でダサいポスプロと大丈夫なポスプロがあり、被写体にマスクをかけるような編集は前者に該当するというもの。カラープロファイルの変更はフィルムを替えるようなものだし、トリミングもフィルムでできることだ。歪みや周辺減光のようなレンズの特性の補正も気にならない。一方で、あえて粒子を加えるような編集や、人工的に周辺減光を再現することや、テクスチャーを下げてわざわざ眠い画にすること等にはかなりの抵抗感がある。そして、その極北に、被写体にマスクをかけて特別な編集を施すことがある。写真などは嘘の塊だが、嘘と真実の境界線をどこに引くか、その葛藤がある。

f:id:Halprogram:20220329202352j:image2021年5月5日 犬 FUJIFILM 写ルンですf:id:Halprogram:20220329202348j:image2021年1月2日 犬 LEICA Q2f:id:Halprogram:20220329202355j:image2020年3月12日 犬 Lomography Simple Use Film Camera,Color Negative ISO400f:id:Halprogram:20220329202358j:image2019年9月5日 犬 LEICA D-LUX Typ109f:id:Halprogram:20220329205120j:image2018年5月5日 犬犬 iPhone8

もうひとつは、被写体の美醜をこちらで恣意的に判断することへの抵抗感だ。DSMのように操作的基準があれば良いが(先に挙げたにきび等はそれに該当し得るのかもしれないが)、あるがままの美しさに手を加えることに、尋常でない忌避感がある。勿論、ここはあまり写して欲しくない、という要望があればそれには応じる。しかし、それとは別で、写ったものを過度に飾り立てることが、わたしの内側にある被写体概念に誠実な行いとは思えないでいる。

f:id:Halprogram:20220329203612j:image2012年8月10日 京セラドーム iPod touchf:id:Halprogram:20220329203604j:image2013年1月4日 公園 SHARP SH002f:id:Halprogram:20220329203608j:image2008年7月25日 猫 CASIO CW42

こういった妙な拘りがあり、それらに対する強迫的な意識が頭の片隅にある。相互に写真についてDMで尋ねたところ、やはりこういった拘りは自身の中だけに収めた方がいいものかもしれない、と思わされた。人に見せるポートレートに関しては、一度試しにこの拘りを無視するようにしてみようと思う。

これまでは写真を自身だけで楽しむ趣味としていたが、今後は人に見せるようにしてみようと思う。上達を望むのであれば、外気に曝す必要があるからだ。人と交わる契機にもなる。いつかあなたも撮らせてください。

おわり