明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

220507

夕暮れ時の空がオレンジと水色のグラデーションをしていた。毎日目にするような、当たり前にある特に何でもないものを、綺麗だと素朴に思う。

夕日が仮に紫色に輝いていたとしたなら、わたしはそれを綺麗だと思っただろうか。現実的な問題として、紫色に輝く程に高温の恒星は、肉眼では青白く見えるだろうが、そういうことを一旦さて置き、太陽が紫色に見える星だったとする。そうしたら、紫や青のような色に暖かな印象を抱くようになるのだろう。夕の字を目にした際にふと頭に浮かぶオレンジ色も、きっと紫色に置き換わる。泰然と輝く紫色の大きな星とその輝きに染まった空が、46億年続いていたとしたら、わたしは紫色の夕焼けに胸を打たれたことだろう。色そのものではなく、色がどのような印象を持っているのか、文化によって規定され、感動したりしなかったりしている。

バイト帰りに買ったファミマのジャスミン茶のフィルムが紫色をしていた。飲み干したボトルを太陽にかざしたら、僅かに残った液体に光が反射して綺麗だった。紫色のフィルムはマットな質感で、特に何ともなかった。ペットボトルはリサイクルに出されて、再びペットボトルになったり、化繊になったりするのだろう。だから何ということもない。無味乾燥な繰り返しの一が終わり、また始まる。当たり前に続いていく、特に何でもないわたしの日々を、綺麗だと思うことは少し難しい。

おわり