明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

220622

嫌な夢から目覚める。午前4時、天気予報は外れて雨上がりの曇り空。晴れない気持ちを散歩で誤魔化す。

f:id:Halprogram:20220622223554j:imagef:id:Halprogram:20220622223244j:imagef:id:Halprogram:20220622223557j:image

東山区は高齢者の人口が多いからか、早朝から散歩に出ている人を何人か見かけ、顔見知りでもないにも拘らず挨拶をされることがあった。都市部で行き交う人間の一人ひとりに声をかけていてはキリがないが、こうした小さな街の穏やかな時間帯ではそれも不可能ではない。特段社交的な方ではないが、嫌な気分にはならなかった。

昼頃には暑苦しい程にまで日が照っていた。JRを乗り継ぎ、散歩2として嵐山へ向かう。本来であれば水曜日は京都大学へ行って岸政彦さんの講義に潜りたいところなのだが、家出生活を始めてからというものの今一つ調子が整わず、6月以降は一度も行けていない。なんかな、ままならんな。何にしても、じっとしているよりは動いた方がいいだろうということで、歩く。

f:id:Halprogram:20220622224753j:imagef:id:Halprogram:20220622224938j:imagef:id:Halprogram:20220622224757j:imagef:id:Halprogram:20220622224806j:image今ひとつ嵐山らしい写真を撮ることが出来なかった。

最後にこの辺りに来たのは2017年の夏、院試が終わった次の日だったか。東京に就職した大学の友達が京都に遊びに来て、彼が借りたレンタカーで当て無くあちこちを回った果てが嵐山だったと記憶している。その際に、『BLEACH』414話の扉絵のモデルになったと思われる場所に立ち寄ったことを思い出し、そこで写真を撮ろうと歩き回ったものの、ついぞ見つけることができなかった。5年振りの嵐山散策は冴えない結果に終わってしまった。

f:id:Halprogram:20220622225625j:imageここです。分かる人がいたら案内してください…(久保帯人BLEACH』48巻7項)

復路にはJRではなく嵐電を選んだ。真っ直ぐに帰ることだけを思えば、来た道をそのまま戻ればいいのだけれど、嵐電のあの小ぢんまりとした形状や車窓からの景色が何となく好きで、折角の機会だから…とそのようにした。

f:id:Halprogram:20220622230524j:imageマニュアルフォーカスに初挑戦!F8で無限遠にセットしただけですが…

窓の外を眺めていると、様々な思い出が頭を過ぎる。ここは修論の調査で立ち寄った場所だとか、あそこは映画のロケで使った駅だとか、昔好きだった人の最寄駅がここだったとか、このあたりにあった駄菓子屋に小さい頃はよく通っていたとか、そういったものが次々に押し寄せてきた。

f:id:Halprogram:20220622231750j:image学生の頃にここで何度か飲んだ。大衆的ながらどことなく趣のあるいい店だった。

四条大宮から京阪の駅がある四条川端まで歩く。大学生の頃に付き合って5日で振られた人がこの辺りに住んでいたな…と思い始めたのを皮切りに、次々に思い出が去来する。思い出の奔流に、息が詰まってしまいそうだ。

f:id:Halprogram:20220622232347j:imageM1の忘年会の2次会が確かこの店だった。店に入る前に近くのファミリーマートで買った水をグビッと飲み干したら、「こなれた飲みっぷりですねえ」と殆ど言葉を交わしたことのなかった飲兵衛の先生から声をかけられた。「いやいや、お恥ずかしい限りで…」等と応じたのを覚えている。先生はM2の途中で亡くなったので、それ以上お話しをする機会は訪れなかった。

"思い出真空パック"という概念がある。

このツイートを引用すれば最早説明の必要も無いように思われるが、学生街であるが故の流動性が京都をノスタルジアの器として機能させているというような話だ。先のツイートには記載されていないが、歴史を持った街であるが故の不変性もこの機能に寄与しているように思う。

わたしは居住地こそ京都一筋ではあるものの、中学と高校は大阪へと進学したことで、地元の友達と呼べるようなマイルドヤンキー的連帯とは無縁の半生を過ごしてきた。中学からの友人は内部進学で同じ大学に進み、大学でも新しい友人に恵まれたが、彼彼女らは卒業と同時に全国に散り散りとなった。其々の胸に真空パックに詰めた京都の思い出を抱えながら、今日もどこかで生きているのだろう。片や、京都生まれ京都育ち京都周辺就労のわたしは、みんなが思い出を真空パックにした京都で、思い出が喉に詰まって窒息死寸前になっている。

f:id:Halprogram:20220622234246j:image5日で振られた相手と別れ話をしたドトールだよ〜ん

京都は魅力的な街だ。京都には手の届く範囲に全てがあり、一度腰を据えると抜け出せない魔力のようなものがある。わたしには、両親が京都市の出身であるが故の、家の縛りもオマケについてくる。遠方の大学に進学していれば、B4の就職活動でうまくいっていれば、そんなことは何度も考えたが、そうはならなかった。自身で選び、掴み取らねばならないことは重々承知だが、今のわたしがそうするには少しばかり力が足りない。ここ何年かで、圧倒的な力を持った存在に攫われて、どうにかなってしまいたいと思うことが増えた。ストックホルム症候群になれる自信があるので、力をお持ちの方はわたしを京都から攫ってください。そんなことを言っている間に肩まで深泥池に浸かっていたりして。

f:id:Halprogram:20220622235545j:imagef:id:Halprogram:20220622235549j:image今日の猫ちゃん 可愛いでしょう

f:id:Halprogram:20220622235709j:image2015年6月22日 デルタで花火

おわり