明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

230412

昨日ほぼ一日中寝倒した上で、多少中途覚醒を挟んだものの11時までぐっすり眠った。眠るだけで人生が終わっていく。

上間陽子の『海をあげる』を読んだ。『裸足で逃げる』を読んだときにも思ったが、上間さんはパワフルな人だ。生活史の聞き取りというよりは、生活への介入とでも言うべき関わりを調査対象と持っている。なんというか、そういう関わりは心理士はやらないというか、やれないよなあと素朴に思う。しかし、このやれないよなあという感覚には、職業倫理によるストッパーとは別のものがあるような気がしてならない。目的が違えばアプローチも違ってくるというのはその通りなのだけれど、そういうものを超えた、熱量とでもいうのだろうか、上間さんにはそれがあって自分にはそれが無いような、そんな感じ。そういう観点でいえば、"何も響かない"という章で描かれた七海という女性の絶望が印象的だった。両親から受けた加害のPTSDの治療にようやく踏み出したという段階で、母親側の援助職からの介入により自身の治療を断念するという、簡潔に文字に起こすだけでも胸が痛むような経過を辿っていた。恐らく、上間さんは七海が拒まない限りは、あるいは程度によっては七海が拒んだとしても、彼女の側にいようとするのではないだろうか。わたしにできるのは面接室で待つことだけだ。

沖縄は抑圧された街だ。沖縄が抑圧された街であるということを、本土で生きる我々はつい忘れてしまう。日々が自分の暮らしで精一杯な人間にできることがあるとするなら、不当な抑圧がこの国にあることを忘れずに過ごすことに他ならないだろう。

webちくまに残っていた分 これだけでも読んでほしい

本屋大賞2021年ノンフィクション本大賞受賞時のスピーチ 上間さんの誠実な人柄と切実なメッセージが伝わってくる

次は信田さよ子の『カウンセラーは何を見ているか』か、先の上間と信田の共著『言葉を失ったあとで』のどちらかを読もうと思う。明日の勤務も暇だとありがたいんだがな。

f:id:Halprogram:20230413014226j:image2019年4月12日 コロナ禍前最後の新歓の賑わいの断片

おわり