明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

toz

トズが死んだ。明け方3時頃のことらしい。起きたら携帯に叔母からのメッセージが入っていた。従弟が夜中にその様子を見ていたらしい。そうか、死んでもうたんやな。

犬の平均寿命は11歳と聞いたことがある。チュートリアルのコントで、犬の平均寿命は15歳だと思っていた徳井扮する実家の母親が「11歳なのに飼い犬が死にそうだ」という電話を息子の福田にかけ、それを聞いた福田がラジオのテレフォンクイズで犬の平均寿命を問われて15歳と答えるも、実際は11歳で賞金獲得とはならず、そのまま実家の犬も亡くなるという展開があったのだ。犬の平均寿命なんて、犬種にもよるだろうにざっくりしてんなあと思うが、それを信じるならば4年も長生きしたことになる。大往生と言っていいのかもしれない。

ラブラドールは加齢とともに腫瘍が出来、それによって死に至ると従妹から聞いたことがある。数年前から身体はブヨブヨの腫瘍だらけで、注射や吸入に環境調整といった手を尽くして、なんとか命を繋いでいると言っていた。よく遊んでいた頃は常に尻尾を振り回し、何をするでもないのにゼェハァゼェハァと息を切らしていた。撫でた手を舐め回す癖があり、彼と遊ぶとすぐに手が臭くなるのに難儀した。4年前から白髪が増えた。真っ黒の体毛が特徴的だったので、「君もすっかりお爺さんやなあ」と内心で思いながら撫でたのを覚えている。「黒一色やとオートフォーカスが効きにくいからな、白髪混じりやと助かる」と従兄は笑っていた。次第に段差の昇降に苦労するようになり、足の踏ん張りが効かなくなり、起きる時間が短くなった。尻尾を振り回すこともなく、息も切らさない。頭を撫でると、手を舐めることはできないが、舌をペロッと出すようになった。すぐに仕舞うので舐めてもらうことはできなかったが、その分もっと撫でるようにした。

生まれたてのトズはとにかく喧しい暴れ犬だった。わたしが小学生の頃に従妹の家の飼い犬(クロ、彼女も可愛らしい犬だった)の子として生まれたのだけれど、顔を合わせるとまあ吠えるわ飛びつくわで、怖かったんだよな。トズがおっちゃんになり、わたしが青年期に差し掛かり、そうなってようやく関わりを持てるようになった。当時、学部を出て院生になるまでの空白期間の寂しさを癒してくれた存在として、クロとトズがあった。久しぶりに従妹の家に遊びに行くと、2匹とも年齢相応とするには少しばかり足りない落ち着きを獲得しており、随分と印象が変わった。週に1日のペースで顔を合わせていく内に、恐らく2匹はわたしのことを覚えてくれているのだろうと感じることが増えた。

社会的動物であるところの人間として生きていると、つい言語偏重になってしまう。日々の思考や感情を自然言語で認識しているのだから、それ自体はおかしなことではない。しかし、情緒的な繋がりとはそればかりではなく、non verbalかつprimitiveなものによって心を重ねることができると改めて認識させてくれたのは、間違いなく彼らであった。

涙は今のところ出ていない。自分の飼い犬でもないのに泣くのも変な気がするし、先月末にこれが最後かもしれないと思いながら目一杯撫でてきたので覚悟もあった。それでも悲しいものは悲しい。トズ、安らかに。

f:id:Halprogram:20230422171715j:image
f:id:Halprogram:20230422171718j:image
f:id:Halprogram:20230422171710j:image
f:id:Halprogram:20230422171706j:image

f:id:Halprogram:20230422172049j:imagef:id:Halprogram:20230422172053j:image
f:id:Halprogram:20230422172125j:image

f:id:Halprogram:20230422171725j:image

おわり