明るい生活の暗い日記

スピードが足りない

220903

夜中まで寝付けなかったにも拘らず、存外早くに目覚めることができた。電車が出る5分前に駅に着く。なんだか余裕のある人間みたいだ。いや、これが普通なのか。鈍行でバイト先へ向かう。

今日の勤務はそれなりに暇ではあったものの、思っていたほど暇ではなかったというような塩梅で、そこそこにやるべきことがあった。途中、他職種からの「お前の専門性ってなんなんじゃい!?」詰められタイムがあり、ヒィッ!となったものの、こういう属性の人とのケースを経験したことがあります…という質感の話で十二分に満足していただけたようで胸を撫で下ろす。言われてみれば、教員や保育士にユンギアンです!内観やってます!みたいなことを言っても仕方がなくて、心理職の世界の中に閉じこもっていてはいけないのだなということを改めて感じる体験だった。バツイチがあれこれ尋ねてくれたのがありがたかった、力になれたならいいのだけれど。歳下上司にゃんはご機嫌で、朝からやんわりとお股事情クエスチョンを投げかけてきた。特に何もないので「ぼちぼちでんな」と答えた。

帰路に就こうとしたら、京阪電車が人身事故で運行停止していた。後から退勤した事業所2の面々と駅で合流し、時間潰しの夕食を摂ることに。店の候補を挙げる際に、「生活さんが学生時代に通った店とか無いんですか?」と尋ねられ、部活終わりに時々行った定食屋がありましたね……とGoogle検索にかけ、5年前に店が潰れたことを知る。最早定食の唐揚げの味を思い出すことも叶わなければ、当時の友人達には店が潰れるよりも早くに見限られていたが、この街で愛おしい時間を過ごしたことを忘れないでいたい、等と感傷に浸る間もなく周辺を練り歩き適当なお好み焼き屋に入った。

急なお酒の席は、一日の中で想定していた感情の振り幅を超えてしまうので……という陰気な理由で一杯目に烏龍茶を注文する。「まあそういうことってありますよね」と言う歳下上司にゃんは家で一人酒を呷る大酒飲み、そんなことあらへんやろと内心でひとりごちる。「昔は急なお酒の席、大好きだったんですけどね〜すみません!」と口は動く。一人で飲む酒は昂った感情を振り下ろす先がわからなくなるので好きではない、歳下上司にゃんはどうしてる?と尋ねると、「彼ピに電話する〜♡」と言っていた。さいでっか。

大きなモダン焼を食べる歳下上司にゃんは、食べる速度が遅いとかで、気にせずサッサと食べてくださいねと言う。特別空腹だったわけでもなかったので、自分のペースでチンタラ食べていたら「ペース合わせてくれてます?」と尋ねられた。そういえば、B1の頃に仲良くしていた人も食べるのが遅く、合わせてゆっくり食べていたら余程ペースが不自然だったらしく、「好きに食べていいよ」と言われたことがあったな。あれは恥ずかしかった。全然関係ないけれど、大学生の男女が2人で頻繁にご飯を食べるというのは何だか色恋シチュエーションに見えなくもないな、B2になって2人で遊びに行こうと祇園祭に媚びたイベントに誘われて、祇園祭が心底嫌いだったので丁重にお断りしたらそれ以降一切話しかけられなくなったけれど、思い返せばあれは色恋デートのお誘いだったのかな、という思考が一瞬の内に駆け巡る。「うちが人のペース気にしてチマチマ食べるような人間に見えまっか?」と場に投げかけ、意識を今この瞬間に戻す。「やるかやらないかで言ったら、やりそうな人だとは思いますけどね」と同期。18歳の頃に染み付いた性根は10年そこら経ったところで変わるものではないらしい。B1春に感じた恥ずかしさが27歳の全身に染み渡り、小さくなった豚玉の切れ端を一口に放り込む。

同期が彼女に振られて可哀想、という話で場が盛り上がる。「好きって一回も言ってもらえなかった……」と同期、「好きって言われたら好きって言わないと!」と歳下上司にゃん、「そうですよねえ」と明るい生活。同期は奥手で誠実な人なので、ハイパー肉食純情ギャルに目をかけてもらったら上手くいくだろうなと思う。歳下上司にゃんは、「同期さんには肉食の女がおすすめ!」と「私の友達は肉食が多い!」という話を同時にしていた。ほなあんた、フリーのねーちゃんでも紹介したったらどない?と喉まで出かかったのを堪える。堪えました。話が一段落して、そろそろ帰るのかな?となったタイミングで、歳下上司にゃんが事業所1への不満を話し始める。もう少しこの場を続けたかったのだろうか。電車はとうの昔に動き始めていたが、我々は今ひとつ勢いに欠ける延長戦に突入した。

電車が動いている。それだけのことが、とてもありがたい。同期と家族の前でギリギリ観れるアニメの話になり、同期はエッチなやつでも全然平気、わたしはジブリかディズニーか古いアニメじゃないとダメでルパン三世ならPARTⅢまでじゃないと、気恥ずかしくなると答えた。

おばあちゃんの家に向かう途中、いつも美味しそうな匂いを漂わせている家がある。この前は金平牛蒡で、今日は餃子だった。何となく、今日は味がする一日だったなと思う。そういえば、今日は昔の友達の誕生日だった。だから何ということもないが、端的な事実としてそうだった。

f:id:Halprogram:20220903235643j:image2019年9月3日 地球屋 地下

おわり